舞う風のように
ばっと飛び出すと鞘を一人の顔に向け投げた。
その鞘を切り捨てようとした浪士に隙が生まれた。
由紀はその浪士に突っ込んだ。
初めての人を殺すことへの躊躇いは無かった。
必死だった。
確かな手応え。
ぱっと朱い華が散る。
「はっ、お主…やるな。」
兄の相手をしていたはずの浪士が私を見てニヤリと笑んだ。
「あ、おい!…くそっ」
しまったーーーー
気付いた時には遅かった。
やっぱり、こいつは強い。
見えなかった。
嗚呼、 悔しい。父の仇はとれなかった。
だがこれでも、武術を習ったもの。
死への恐怖はない。覚悟は出来てる。
迫り来る銀の光を見た後、由紀はゆっくりと目を閉じた。