舞う風のように
〜〜
「では…改めまして。俺は、佐上 八尋と申します。」
そう言って、誰もが恍惚とするような笑みで由紀は微笑む。
「そうか、佐上君だね。」
少し硬い表情で、近藤も笑みを返した。
やはり、由紀を警戒しているのか周りの者も表情が硬かった。
そして、土方がみんなをまとめるように声を上げる。
「…で、部屋を決めてぇところだが、残念な事に今は空き部屋がねぇ。」
「平隊士の使う大部屋もあるんだが…佐上は隊士に顔が見られてるから、色々面倒だ。」
確かに、反感は買うだろう。
何せ、長州の会合場所に居たのだから。
「俺の部屋は夜まで仕事に使うから無理だ。…誰か今だけ同じ部屋でもいいって奴はいねぇか?」
土方は幹部を見回す。
「俺が相部屋になっても良いんだけど…生憎今は三人なんだよな…。」
そう言って苦笑する藤堂。
さっさとしろ、と言いたいのを我慢する。
ふと、天井で気配が動いたのに気が付いた。
思わず天井を見つめる。
(…監察型?)
天井板が外れるのが分かった。
小柄な黒い影が飛び降り、綺麗に着地する。
「副長。」
切れ長の整った顔をした忍者服の青年。
「俺は普段、滅多に部屋には戻りません。なので、俺の部屋を使って下さい。」