舞う風のように
ゆっくりと光の失われて行く瞳。
頭に乗せられた手から力が抜けた。
落ちそうになったその手を、すんでのところで掴む。
その、近所で評判だった端正な顔立ちの兄。
今、その体はピクリとも動かない。
少しずつ体温の失われて行く手に、涙が零れた。
「…兄さん?」
嫌だ。イヤダイヤダイヤダイヤダ!
「兄さん!!」
慌てて体を揺らすとその冷たさに驚いて…
変えられない事実を思い知らされた気がした。
暫くして、少し落ち着くと裸足のまま外に出た。
さっきまで風なんか吹いてなかったのに。まるで私の心情を表すかのような暴風に驚く。
季節外れの雪も降っている。
兄さんと父。大切なものを失った由紀に残ったのは、強い"憎しみ"。
空に浮かぶ赤い月に由紀は誓った。
ーーーーー父さん、兄さん。
貴方の仇は、この風見 由紀が必ずやうち遂げて見せましょう。
風が一際強く吹いた。