お兄ちゃんができました。
「ほ、ホー汰……?」



ホー汰の近くに座ると、私は恐る恐る呼びかける。

返事がない。まるで屍のようだ。

……じゃなくて!!




「え。嘘でしょ? まさか、ホントに死んじゃったの? や、ヤダ。ホー汰? 死んでるなら返事してぇ!!」

「……死んだ奴が返事したら怖いよ。ハル」





私の頭の中に、ホー汰と過ごした日々が蘇る。

コイツの餌を知ってドン引きしたこと、何故か顔を合わせるたびに攻撃されたこと、時には何故か私の頭の上にとまり、攻撃された仕返しにと頭をふってふり落してやったら容赦なくつつかれたこと。

ほんっと、何か嫌な奴だったけどでも……それなりに楽しかったのに。

じわりと、目頭が熱くなり視界が滲む。

慌てて袖で目を擦ると、迷惑そうな声が降ってきた。



「うっさいわねぇ。何騒いでんのよ。陽花」

「お、お母さん!! ホー汰が……。ホー汰が死んじゃった!!」

「……は? 何言ってんの。ぴんぴんしてんじゃない」

「……え?」




目を丸くするお母さんの視線の先を辿り、私は初めて本気で殺意と言うモノを抱いた。

なぜなら、私の視界に入ったのはバカにしたような表情で180度に首を回すホー汰。





「…………」





悔しさやや、恥ずかしさやらで声も出ない。

私の涙を返せ。






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