お兄ちゃんができました。
その視線の先には夜行性だろうホー汰。




「……」



ホー汰は可愛らしく鳴き声をあげると首をかしげ、私をじーっと見つめる。

……何しに寝どこから出て来た。このフクロウ。

昨日のこともあ臨戦態勢を取る私に、ホー汰もまたばさりと翼を広げる。

おー。やる気かフクロウ。やったらぁ! 昨日の復讐も兼ねてかかってこい!

挑発的に笑ってやると、まんまと罠にはまったホー汰はばさりと羽をはばたかせる。

奴を廊下に叩き落としてやろうと、やったことも無いカンフーのポーズを取ったと同時に、ホー汰がものすごい勢いで飛んできた。

すいっと目を細めて私が腕を振り上げた時、不意に容赦なく襟首を引っ張られて私は後ろへ覗けぞった。




「え? え? わぁっ」



バランスを崩した私は後ろへと倒れかけ、何かに当たって何とか背中から点灯することを免れた。

な。何!? 驚いて背後を見やれば、そこには淡々とした表情の志月くんが私の肩を持って真っ直ぐにホー汰を見据えている。




「ホー汰」




美しい声でその名を紡げば、私の宿敵は何か用かと言わんばかりに首をかしげて瞬きをする。




「ホー汰。大切なものは、大事にしないと離れて行くぞ」

「……」



……あ、あの。志月くん……?

何をたかがフクロウ相手にそんな真剣なこと言ってるんですか……?

てか、大切な物? 大切なものって何?

アレか。アイツが大事にしてるピンク色のフクロウのぬいぐるみか。

離れて……行かないよね? ぬいぐるみだもん。

つつかれてボッロボロにされても離れないよ。てか、離れられないだもん。

……嗚呼。何か可哀想に思えて来たっ!!

自分で考えて奴のガールフレンドのことが可哀想になり泣きそうになっていると、何と言うことでしょう。

ホー汰が。さっきめっちゃ真剣に話してた志月くんの言葉聞いてたホー汰が。

私に飛びかかってきた――!!



「えええぇぇぇぇ!?」



お前っ。お前、さっき何聞いてたんだよ!

大切な物は離れて行くんだぞ!? お前の大切な飼い主様も離れて行くんだぞ!?

驚愕して逃げようと試みる私を、あろうことか私の肩を強く掴んで邪魔をしてきた。

えぇ。志月くん!? 何してるの。私の命の危機だってのに!!

目を見開いて、志月くんを見上げれば彼はいたって真剣な表情で私を見下ろしている。




「志月くん!? 離してくれないかな! じゃないと私死んじゃう。突き殺されて悲惨な姿になっちゃう!! 私死ぬんなら寝てる間に痛みも感じずに死にたいの!!」



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