お兄ちゃんができました。
何も言えなくて沈黙する私。

だって仕方ないじゃん。今まで敵だ敵だと思ってた奴が、まさか私のことが好きだったんだから。

何この状況。ちょっとした少女マンガになるんじゃない。フクロウ相手ってのが辛いけど。

どうせなら志月くんみたいなイケメンがよかったわ。どうせ無理だけど。

しばらくの間、私は志月くんと見つめ合う。

微妙過ぎて何も言えない私をニコニコと見つめる志月くんは窓から差し込む光に照らされて、色素の薄い髪が金髪に見えて王子様みたいだ。



「陽花ー! 志月くんー! いつまで寝てるの。おきなさーい! ……って何してるのアンタ達」

「ちょっとホー汰に告白されまして」

「はぁ? アンタ本当にちょっと……病院行く?」




心配そうに眉を下げて、真剣に私を見つめるお母さん。

うわぁ。ちょっと待って。コレ本気で頭の心配されてる。

されるかな、ってちょっと思ってたけど、でも実際にされたらグサッとくるものがあるよね。

心に深々と突き刺さった黒い棘を引きつった表情で見下ろしていると、突然志月くんがクスクスと笑みを零した。




「ハル。凄い傷ついたって顔してる」

「……え」

「表情豊かな子、オレは好きだよ」

「…………え」



爆弾発言を投下して回収すること無く、志月くんは爽やかな挨拶をお母さんにすると階段を下りていく。

私は呆然とその後ろ姿を見送りながら、頭の中では先ほどの彼の言葉が何度もリピートされる。

好きだよって……。イケメンに――志月くんに好きだよって、言われた……。

多分、志月くんにはなんてこともない言葉だと思うけど、でも。

自分の顔が火がついたように赤く火照る。

真っ赤になったその顔をお母さんにみられたくなくて、苦労して伸ばした髪で隠しながら私は瞬きを繰り返す。

心臓に悪いよ。志月くん……。








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