お兄ちゃんができました。
美少年は私の目の前で立ち止まると、目を隠している前髪を手に取りどこからもってきたのか。
ピン留めを取りだすと、私の前髪をあげた。いわゆるポンパドールとか言う奴。
目を隠すものがなくなり僅かに顔を強張らせると、美少年は私の瞳を覗きこみフッと淡い笑みを浮かべた。
「やっぱり。そっちのが可愛い」
「……へ?」
か、可愛い?
低すぎず高すぎない。心地よい声が紡いだ破壊力抜群な言葉に、私の顔はどんどん熱を帯びる。
赤くなる顔を見られたくなくて咄嗟に両手で顔を覆って俯いた。
ちょっ、ちょっと待って私! 何を赤くなってるの?
可愛いなんて、私にいうはずないじゃない。
だって、私よ?
かれこれ10年ほど“さだこ”のあだ名をもつ私よ?
街を歩けば悲鳴をあげられ――最近では、何かのイベントかと大勢の人間に囲まれ――、
学校では生徒どころか教師までもが私のことをさだこ呼び。
教師たちは私の名前を知っているんだろうか。
文化祭でお化け屋敷をするときには、必ず本物と間違えられる。
そんな私が、可愛い? あり得ないあり得ない。
きっとピン留めか何かにいったに違いない。そうだよ。うん。
乾いた笑みを零すと、何故か目を細めた彼と目が合い私は慌てて視線をそらす。
すると、彼はクスリと笑みを零して私の目の前に移動して手を差し出した。
「初めまして。今日からキミの“お兄さん”になる、志月(シヅキ)です。よろしくね?」
「え、おにい……え?」
なんだって?
お兄ちゃん?
ああ、そうだ! 結婚って何よ!?
すっかり忘れていた話しを思いだし、私はお母さんに詰め寄る。
「お母さん! 結婚って何!? 私聞いてない!」
「さっき言ったじゃない。結婚するって」
「さっき!? 普通は事前に行っとくもんじゃないの!?」
「普通なんて知らないわよ。てか、私。普通嫌いなの」
「………」
そうだった。
この人、小動物には優しいけど基本こんなサバサバで冷めた性格なんだった。
普通が嫌いとか言ってるけど、あなた容姿と性格以外は全部普通ですよ。
生活とか金銭感覚とかね。
がっくりと肩を落としてため息をつくと、お母さんの隣で苦笑を浮かべる誠さんの肩にポンっと手を置く。
「……ねぇ、誠さん。この人のどこがよくて結婚しようと思ったの? 性格こんなだよ? 身体目当てだったら絶対こうか――」
「……アンタ、いい加減黙らないとガムテープ口に貼ってつるしあげるわよ。え?」
なんて恐ろしいこと。
思わずその光景を想像し、私は身震いした。
冗談じゃない。そんなの恥だ。恥。
小さい子に指指されて、お母さんが「みちゃいけません!」って言って足早に去っていく光景がありありと浮かび、私は頬を引きつらせる。
誠さんの肩に手を置いたまま固まっている私に、誠さんはまたもや苦笑を零し私の頭を優しく撫でる。
「まぁまぁ、悠希(ユウキ)。落ち着いて。
――安心して。陽花ちゃん。私は、キミのママを心から愛しているから結婚しようと思ったんだ。
決して、やましいことを考えて結婚しようとしているわけじゃないよ」
「そ、そう……ですか」
ピン留めを取りだすと、私の前髪をあげた。いわゆるポンパドールとか言う奴。
目を隠すものがなくなり僅かに顔を強張らせると、美少年は私の瞳を覗きこみフッと淡い笑みを浮かべた。
「やっぱり。そっちのが可愛い」
「……へ?」
か、可愛い?
低すぎず高すぎない。心地よい声が紡いだ破壊力抜群な言葉に、私の顔はどんどん熱を帯びる。
赤くなる顔を見られたくなくて咄嗟に両手で顔を覆って俯いた。
ちょっ、ちょっと待って私! 何を赤くなってるの?
可愛いなんて、私にいうはずないじゃない。
だって、私よ?
かれこれ10年ほど“さだこ”のあだ名をもつ私よ?
街を歩けば悲鳴をあげられ――最近では、何かのイベントかと大勢の人間に囲まれ――、
学校では生徒どころか教師までもが私のことをさだこ呼び。
教師たちは私の名前を知っているんだろうか。
文化祭でお化け屋敷をするときには、必ず本物と間違えられる。
そんな私が、可愛い? あり得ないあり得ない。
きっとピン留めか何かにいったに違いない。そうだよ。うん。
乾いた笑みを零すと、何故か目を細めた彼と目が合い私は慌てて視線をそらす。
すると、彼はクスリと笑みを零して私の目の前に移動して手を差し出した。
「初めまして。今日からキミの“お兄さん”になる、志月(シヅキ)です。よろしくね?」
「え、おにい……え?」
なんだって?
お兄ちゃん?
ああ、そうだ! 結婚って何よ!?
すっかり忘れていた話しを思いだし、私はお母さんに詰め寄る。
「お母さん! 結婚って何!? 私聞いてない!」
「さっき言ったじゃない。結婚するって」
「さっき!? 普通は事前に行っとくもんじゃないの!?」
「普通なんて知らないわよ。てか、私。普通嫌いなの」
「………」
そうだった。
この人、小動物には優しいけど基本こんなサバサバで冷めた性格なんだった。
普通が嫌いとか言ってるけど、あなた容姿と性格以外は全部普通ですよ。
生活とか金銭感覚とかね。
がっくりと肩を落としてため息をつくと、お母さんの隣で苦笑を浮かべる誠さんの肩にポンっと手を置く。
「……ねぇ、誠さん。この人のどこがよくて結婚しようと思ったの? 性格こんなだよ? 身体目当てだったら絶対こうか――」
「……アンタ、いい加減黙らないとガムテープ口に貼ってつるしあげるわよ。え?」
なんて恐ろしいこと。
思わずその光景を想像し、私は身震いした。
冗談じゃない。そんなの恥だ。恥。
小さい子に指指されて、お母さんが「みちゃいけません!」って言って足早に去っていく光景がありありと浮かび、私は頬を引きつらせる。
誠さんの肩に手を置いたまま固まっている私に、誠さんはまたもや苦笑を零し私の頭を優しく撫でる。
「まぁまぁ、悠希(ユウキ)。落ち着いて。
――安心して。陽花ちゃん。私は、キミのママを心から愛しているから結婚しようと思ったんだ。
決して、やましいことを考えて結婚しようとしているわけじゃないよ」
「そ、そう……ですか」