お兄ちゃんができました。
ああ。なんて言う素敵な笑顔。

ここに私とお母さん以外の女子がいたらどうなるだろう。

……想像するのも嫌だ。

ふぅ、とため息をつくと志月くんは誠さんとお母さんのほうを一瞥する。



「――ねぇ、ハル」

「はい? ……え?」



ハル?

咄嗟に返事をしたものの、聞きなれない単語に小首をかしげる。

ハルって何?

不思議に思って志月くんを見ると、彼の目は確かに私を捉えていて。

私は目を瞬かせた。

そんな私の反応に、彼は笑顔で小首をかしげて見せる。



「どうしたの?」

「あの……ハル、て?」

「うん? キミのあだ名だよ」

「私の?」



うん、と彼は微笑を浮かべて頷いた。

あ、そっか。私の名前、陽花だから……。

だから、ハルなんだ。

納得して頷いて、私はクスリと笑みを零す。

それにしても……、なんて可愛らしいあだ名なんだろう。



< 8 / 23 >

この作品をシェア

pagetop