【短編】疾風恋心

３

「キャアｯ!」



熱狂的な林ｸﾝファンの一部では悲鳴が聞こえる。





それでも林ｸﾝはすぐ立ち上がり、
ウチのクラスのキャプテンに次ぐ、２位という結果に。






奇跡の逆転トップに輝いたキャプテンは何だか複雑な表情をしていた。




私も何だか複雑。

キャプテンを応援してたのに、


林ｸﾝへの罪悪感でいっぱい。







トンｯ…。




「？」




突然後ろから軽く背中を叩かれ、

一歩前に体が動いた。






「あっ､奈々…。」




「なにボケっとしてんの!
……あんた、気づいてるでしょ?」






…………。




奈々も気づいてたんだ…。




林ｸﾝが転んだ時、

他の人は気づいてないと思うけど、



足を捻っていたのが見えた。






ゴールした林ｸﾝは何事もなかったかのように、

表の林ｸﾝで皆に少し残念そうな表情(ｶｵ)をしながら生徒席に戻ったけど、




汗を、異常にかいている。






…やっぱり…っ。






林ｸﾝファンはそれを良いことに、
座っている林ｸﾝにタオルを差し出しているけど、







触んないで。






私が１番、林ｸﾝをわかってる。








「…林ｸﾝ。」





座っている林ｸﾝの目の前に立つ。






「ちょっとー、他のクラスのテントに入らないでくれる?」




タオルを差し出しているファンの一人が言う。






「今はそれどころじゃないの。
……ちょっと来て。"ゆっくり"でいいから。」