【短編】疾風恋心
林クンは私の言葉の意味をすぐに感じとったのか、席を立った。
周りの人達は意味がわからず頭に"?"を浮かべている。
私の誘導に素直に着いてくる林クン。
少し、足を引きずっている。
その後ろ姿を見たであろうファンが、
背中越しに
「えっもしかして林クン…」
と聞こえた。
「ってぇー……。」
「そんなに酷くはないわね。
良かったね、出場する種目が全て終わってて。」
林クンの足に包帯を巻きながら保健室の先生が言った。
そう、さっきの400Mで林クンが出る種目の最後だった。
クラスの皆に迷惑をかけなかったことに、
私と林クンはホッとした。
「じゃあ私は本部に戻るから、お昼まで安静にしてなさい。」
保健室の先生はそう言って外に戻った。
2人きりだ……。
「だっ、大丈夫……?」
沈黙が好きじゃない私は、真っ先にそれを破る。
「ああ、大丈夫。
ありがとな。
芽衣子が声かけてくれなかったら俺泣いてた。」
と冗談をかましながら微笑む林クン。
…良かったぁー…。
私は全身に力が抜けるように、
林クンの隣に座った。