恋 時々 涙
●授業
チャイムが鳴り、昼食時間の終わりを知らせる。
私と遥、2人きりだった静かな教室が一気に騒がしくなる。
ふと前を向くと、ちょうど拓海と淳ちゃんが帰って来た。
『さっきのこと、わすれてないからなっ』
そんなことを考えながらチラリと拓海を見る。
「っ!!!」
不意に目があった。
何か盗み見したような気分で無意識に目をそらす。
「ほらよ」
拓海が私の机に雑にクリームパンを置く。
「これ…、なかなか買えないんじゃ」
拓海がくれたのは、私のお気に入りの購買に売っているクリームパン。
他の生徒にもやはり人気で、なかなか買えない。
なのに、何で…。
「俺、クリームパン食べないから」
私のほうじゃなく、窓の外を見ながら無愛想に言う。
素直に"買ってあげた"とか言ってくれればいいのに。
"さっきのお返し"だとか言えばいいのに…
そうやって窓の外を見て、照れくささを隠してるの、知ってるよ?
でも…。嬉しい
「拓海!」
「何?」
「ありがとう」
名前呼ばないと、こっち見ないだろうから。
お礼はちゃんと目を見て言わないとね。
「そんなの。礼言われるほどじゃねぇよ」
そう言って、また窓の外に目をやる。
『素直じゃないやつ』
内心、いつもこう思う。