恋 時々 涙
●放課後
ホームルームが終わり、ざわつく教室。
「じゃあまたねっ」
遥に手を振り、私も部活に行こうとバッグを持つ。
「七瀬っ(ななせ)」
「はい」
声をかけてきたのは、このクラスの担任。
今村 翔一(いまむら しょういち)通称"今先(いません)"
24歳の若い先生で、生徒にも人気。
「七瀬、頼みが…「いやですよ」
今先が言う前に割り込む。
だってこのあと言うことなんてだいたい予想つくから…。
「まだ何も言ってないじゃないか」
「………」
笑う今先を少し冷めた目で見つめる。
「大丈夫だって!雑用だか、大したことない」
やっぱり…雑用なのか。
「はぁ…。いいですよ。何ですか?」
こうなるとするしかない。本当は早く部活に行きたいのだけれど…。
「この本を探して来てほしいんだ。図書室で」
私に小さな紙を渡す。紙には10冊ほどの本の名前が癖のある字で書かれてある。
「すべて経済の文庫にあるはずだから、頼むよ」
紙を見つめながら図書室に向かう。
『早く探して、早く部活行こう』