恋 時々 涙
優がバスを降りて、俺もすぐにバスを停めて優を追いかけた。
『謝りたい』
その一心だった。
なんてひどいことをしたんだろう。今頃になって恥じても遅いのに。
心配と罪悪感に圧迫されて吐き気がする。
電灯が一本だけ立っている暗く、細い道を必死で探すが見つからない。
こんな形にしたのは俺だ。優を傷つけて、泣かした。
謝りたい…。今すぐちゃんと謝りたいっ…
「……無事でいてくれ…」
そう小さく呟くと、ケータイが鳴った。
『優っ!?』
「もしもしっ!!!」
切らした息を整えず、慌てて電話に出ると、電話の相手は優ではなく。
予想もしない人でからだった。
「…拓海くん…」
「おばさんっ!どうしたの!?何があったの!?」
電話の相手は
優の母さんからで、その声は震えていて、泣くじゃくったような弱く、小さな声だった。
いつもの元気なおばさんじゃない。
「…優が…」
おばさんの泣き出しそうな声に
嫌な予感が胸を多い尽くす。
「優が交通事故に遭って…。今…病院に搬送されたの……」
「…え……」
心臓が止まったような感覚に襲われた。思考が停止して、頭が真っ白になって、全身の力が抜けていく。血の気がサーと引いていく。そんな感覚。
「…重症…みたいなの…。ケータイの最後の履歴に…拓海くんの名前があったから何か……」
電話の向こうでおばさんが泣き叫んでいる。
その声を聞いて、目頭が熱くなった。
「おばさんっ!!すぐに行くから!!今すぐ行くからっ、待ってて!!どこの病院!?」
泣きじゃくっているおばさんの言葉をなんとか聞き取って、俺はすぐにタクシーを停めて病院へ向かった。
何も考えられなかった。ただ優のことしか頭になかった。
『ごめん優っ…。本当にごめんっ』