恋 時々 涙
学校につき、教室へ向かうが
何かズルズルとまとわりついているように足が重い。
黒々とした胸のモヤを振り払うように、思いきり教室のドアを開けた。
だけど、教室の風景は
何一つ変わっていなくて、俺の気分とは正反対に
明るかった。
静かに席について、
ふと隣の空いた席を見る。
優の席。
いつもなら、俺が来る時間にはもう来ていてあのキラキラした笑顔で、
『おはようっ』
と言ってくれたのに。
「………。」
「おっはよ、拓海!!」
「っ!!!…あ、お…おはよう…」
「何よー、そんなビックリしちゃってさぁ」
動揺したのは、突然遥が話しかけてきたから、ビックリしたのと。
隠し事をしたまま、遥と普段通りに話すのはやっぱり、難しいってのがあった。
「あ、優まだか」
「そっ、そうみたいだな…」
遥と目を合わせることが出来なくて、ついそらしてしまう。
「何か変ねー。何か隠してるわけ?」
「何も隠してねぇよ!!…ちょっと、俺トイレ行ってくる」
少し荒く椅子を引き、早々と席を立ち去った。
「ちょ、拓海っ」
遥が呼ぶが、聞こえないふりをして小走りで教室を出た。
怖かったんだ。
遥にこれ以上詰問されるのが。
隠しとおせる自信がなかったんだ。