【死場】~連続変死ミュージカル~
「今日は何事もなくて良かったよな」
何事も――とは、死人が出なくて、という意味だろう。
「でも相変わらず歌澄さんヒドかったなぁ。才能ないよ」
開始したばかりの飲みの席で、沢山の悪口が飛び交う。
徳野紗雪は、何も言えず俯いてる・・・。
(参加しなきゃ良かった)
そう思ったが、誘いを断る勇気がなかった。
(でも・・・)
今日の自分は褒めてやりたい――と、紗雪は思った。
憧れの歌澄に声を掛ける事が出来た。
名前も聞かれた。
救われたと言ってもらえた。
憧れが恋に変わるかもしれない予感を感じていた・・・。