〖短編〗2度目のサヨナラ。
スカートをギュッと握ってから、どれくらい時間がたったんだろう。
きっと数秒なんだろうけど、あたしには時が止まったように感じられた。
それに耐えられなくて、勢い良く立ち上がり、宏斗から遠ざかった。
「ッおい、待て!!!」
…分かってる。
かなわない恋だって、ちゃんと分かってるんだ。
でも、それでも
引き止めようとしてくれたことが、すっごい嬉しかったよ。
初めてあたしに、声をかけてくれたよね。
目が合ったことは何回かあったけど、声はあたしにかけてくれなかった。
いつも宏斗は《あの子》に向かって…
…でも、ちゃんと見てくれた。
ちゃんとあたしに向かって、話してくれた。
それだけで、十分だよ。