〖短編〗2度目のサヨナラ。
〖蓮side〗
『蓮、おねがい。
ヒロに見せたい景色があるの。』
おねがい、か。
今まで誰にも“お願い”をしたことがなかった瑠羽からのお願いだ。
聞いてやらなきゃ、瑠羽が可哀想だよな。
失踪してから初めて会った屋上で、瑠羽はこう言った。
“宏斗が元気ないから。
笑わないから。
泣かないから。
ずっと、〈彼女〉を待ってるから。”
俺はそれを聞いて、何ともいえない思いに駆られた。
死んでもなお、自分の死に気付かず、宏斗の心配をしてる瑠羽。
自分のコトなんて二の次で、気持ちが先走って。
だから、記憶が追いついていかなかったんだろうな。
あの時俺が屋上に行ったのだって、
((宏斗に笑って欲しい。
宏斗に泣いて欲しい。
あたしを見て。
あたしは、ここにいるよ。
宏斗、気付いてよ。))
瑠羽の声が聞こえたからだ。
瑠羽はフワフワと流れるように俺たちの前を歩いていく。
風が吹いたら消えてしまいそうで。
俺が触れたら消えてしまいそうで。
でも、どんなに手を伸ばしたってとどかない、そんな近くて遠い存在。
結局、俺の想いは届かずじまいで。
それでも忘れることができず、ズルズルとこの想いを引きずってるんだ。