透明メロディ
私が急いで向かった先は、勿論学校なんかではなく。
「んー今日も良い空気っ」
学校のすぐ近くにある、神社だった。
小さな頃から何故かこの場所が好きだった。長い長い階段を登った先にある小さな神社。そこには少しヒンヤリした空気と木や土の匂いのする風が吹いていて、ほんのちょっぴり現実離れした雰囲気があった。
私はこの場所で歌うのが本当に好きだった。
心地よい空気に包まれて。その空気をめいいっぱい吸い込んで吐き出す。その息に声をのせれば音が空に溶けていくような感覚を味わえた。
それが堪らなく気持ち良くて嬉しくて、自分が自然の一部になった気がした。
「ー♩」
「〜♬」
「♪〜♫」
お気に入りのバンドの曲を聴いていたらたまらなくなって、歌いたい気持ちが溢れて急いでこの場所にきたというわけだ。