〝好き〟の間違い探し
みんなにバイバーイと挨拶して、達郎と肩を並べて教室を出た。
パタパタン。
靴箱から適当に放ったローファーが片方裏返ったんを、女子力なんかカケラもないあたしはちょいちょいと足で直して、ねじこむ。
トン、と馴染ませて、達郎の方に駆け寄った。
外は寒くて、肩が意図せず上がる。
素手に外気は痛くて、ぎゅうっと握り締めてもなお寒い。
「あれ?」
明らかにあたしに向けられている言葉。
「なにー?」と首をすくめたまま返した。
「お前、手袋は?」
「あー、朝、家に忘れてん」
寝坊したからって慌てて飛び出すもんちゃうなーということを再確認。
茶色くって、分厚いぬくぬく毛糸の手袋が恋しい。
「忘れたって……ほんとバカだなー。
寒がりのくせに大丈夫なわけ?」
「なめてんのか。
大丈夫やったらこんな手ェぎゅーってしてへんわ、アホ。
死ぬほど寒いっちゅーねん」