ぼくのモナリザ
純ちゃんが、あんぐりあけていた口を閉じた。
これは属にいう『おこ』なのか、口も利きたくないのか。
僕は起き上って、体操すわりで小さくなった。

すると。聞えてきたのは意外な言葉である。

「會村くん・・うちの苦労分かってくれてるん?」

「へっ?」

「會村くん!なんて心の広い人なん!」

ぎゅううううううう。
そして僕は抱きしめられた。
豊満な胸に圧迫される顔面。
息ができないことをこんなに嬉しいと感じたのは初めてだ。
しかし、まぁ、まったく意味が分からない!
純ちゃんは怒ってなどいない、むしろ、喜んでいる。
僕のこと、心の広い人って言った?

「ぬぶぶぶぶ」

「あっごめん!苦しかったよな!ごめんな!」

惜しい気持ちと酸素がやってきた。
なんて開放感。
汗と間違って鼻血は流れてこないのだろうか。焦る。

「あ、あの、意味がわからんよ、どゆこと?」

カルピスを飲んで冷静さを装った。
心臓はちっとも冷静ではない。
例えるならば、ひな壇でいい子にしていた芸人たちが、
一斉に起ち上って突っ込みを入れたみたいな勢いだ。
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