年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)



「それでいいんだな?」
「うん」
「分かった」


 私は鎌谷を呼び出した。近所のファミレス、テーブルの上には同意書がある。鎌谷はそこに署名をすると印鑑ケースから印鑑を取り出し息をはーっと掛けてから書類に押した。


「ありがとうございます」


 私は深々と頭を下げた。鎌谷はいいから早くしまえよ、と顎をしゃくる。私は書類を折りたたみ、封筒に入れて鞄にしまった。鎌谷に打ち明けた、妊娠の事実。薄々感づいていたのか鎌谷はあまり驚きはしなかった。勿論、ボンボンにちゃんと相談したのか、とか、後悔するんじゃねえか、とか尋問を受けた。でも私は考えた結果、産むことは出来ないと鎌谷に話した。産んだら由也くんに迷惑が掛かる。万一もし隠し子がいたのが公になれば仕事にも差し支えるし、由也くんの父親の耳に入れば由也くんが勘当される。

 由也くんに内緒で産むことも考えた。会社を辞めて実家に帰って出産する。きっと可愛い孫が生まれたら両親も目尻を下げるだろう。もし反対されたら一人で育てればいい。でもそれだと新たに仕事を探さなくちゃいけない。子供と二人、そんな私を採用するところがあるだろうか、生活もままならない。一人で生きてく覚悟がなきゃ無理で……。

 人間皆平等とか人の上に人を作らずとか言うけど、幻聴なんだ。望まれて生まれてくる命と疎まれて生まれてくる命とに分けられる。どんなに可哀想だと思っても、それは現実で、それを作り出しているのは他でもない自分なのだ。


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