年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 由也くんの腕にはあの時計が巻かれていた。


「あれ?」
「あ、はい。修理が終わって」


 由也くんは箸を置き、立ち上がると鞄から箱を取り出した。それを開けると中には腕時計が入っていた。


「私の?」
「そうです。もう、いらない?」


 由也くんはそっと取り上げて裏面を向けて私に差し出した。そこには文字が刻まれている。由也くんと私の名前、そして式を挙げた日も。メンテナンスだと思って預けたのにまさか彫刻までしてもらえるとは考えてもみなかった。私は首を横に振ると由也くんは私の左手を取り、腕時計を当てる。


「綾香さん遠慮してたでしょ」
「だって」


 僕には綾香さんしかいないから、とベルトを巻き留めた。

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