年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
それからほぼ毎週末、私はあの高原に足を運んだ。途中で花と駄菓子を買い、それを手にお寺に向かう。水子の石碑の前で手を合わせる。何度も訪ねるうちにご住職とも顔見知りになり、東京から熱心に通う私を労ってくれた。
今後再び妊娠するようなことがあれば、赤ちゃんを産むと由也くんと約束した。それはそれで嬉しかった。もしかしたら由也くんと赤ちゃんと3人で家庭を持てるかもしれない、普通の生活が出来るかもしれない。でも実際問題それは不可能だと思った。由也くんはスマ乳の社長子息で跡を継ぐ。もし由也くんと社長の喧嘩で親子間にひびが入れば会社運営にも差し障る。ライバル会社と言えどスマ乳の社員やパートの生活を考えたら、私ひとりのためにその生活を脅かす訳には行かないって。それに長男に出て行かれた今、次男の由也くんにまで出て行かれたらご両親はどうなるだろう……。
「……」
こんな私が言えた台詞じゃないけど、子を失う辛さを知った。由也くんのご両親を思うと駆け落ちも勘当もあってはならないと思った。
シーズンになったのもあるけど由也くんは週末に接待ゴルフに出ることが増えた。平日も残業が増えて会える日も少なくなって、少し寂しかった。