年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
「……」
彼女は慌てて手を引っ込める。恥ずかしかったのか少し俯いた。そんな彼女を由也くんは優しく彼女を見つめる。
「ふうん、そ」
ああ、そうか。彼女とはお見合いじゃない。何処ぞやの令嬢との結婚ならお見合いから入る。互いに結婚を前提としてるから事務的に話は進むだろう。料亭かホテルで会って紹介しあって、これからのスケジュールを決めましょう、お式はいつで、場所は何処で、みたいな流れで。でも彼女とは違う。結婚前提で知り合ったんじゃない。今はただの同じ部内の社員だ。これから上司と部下という関係を脱却して友達以上恋人未満になる。直に恋人になる。恋人になって婚約者になって奥さんになる。つまりは社内恋愛からスタートする訳で。
「……」
満更ではない由也くんの顔。お似合いな二人。私より若くて可愛くて、私は惨めになった。
私はいたたまれななくて後退りした。そのまま通用口から裏口に出た。由也くんと彼女が帰ったら売場に行こうと思い、二人が出てくるのを外で待った。