年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
「ん、あれ」
「鍵開いたよ」
「いやタクシー。戻って来たぞ、何か忘れもんしたかあ?」
酔った頭で振り返る。そこにはタクシーが停まっていた。でもさっき乗ってたタクシーと色が違うし、開いたのは運転席のドアではなく後部席のだ。
「んん? 由也くんだ。あれ、由也くんが二人いる。分身の術だ」
「ボ……長谷川、この状況気付けよ」
組んでいた腕を鎌谷に振り払われた。タクシーから降りた由也くんが階段を上がって来る。
「綾香さん」
「由也くん、なあに?」
階段から上がって来た由也くんは無表情で怒ってるみたいだった。隣にいた鎌谷は私を由也くんに突き飛ばすようにした。私は由也くんの胸に顔をぶつけた。鎌谷は無言で階段を降りて行った。