年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)


「だからなあ余計に」
「何がですか」
「小型望遠鏡、父親に買ってもらったってやつ」
「はい」
「そんな金持ちが何故小型望遠鏡にこだわるのか不思議でね。よくよく考えてみたんだが、余程嬉しかったんだろう。そう思うと不憫で」
「不憫?」
「忙しい父親に買ってもらったちっぽけな望遠鏡を大切にしてるってのがね」
「はあ確かに……」


 由也くんは結婚したときにもあの望遠鏡を持ってきた。私に土星の輪や木星を見せてくれた。多分今日も持って来てるだろう。


「話が逸れましたが、何故結婚しないのかな?」
「実は……」


 そう言いかけたところで階段を下る足音が聞こえた。由也くんはしゃがんで調整してるうちに服を汚したと笑いながら戻って来た。由也くんと荷物を持ち、部屋に行く。由也くんは着替えるなり、また屋上へと飛び出して行った。
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