年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 最後の白玉を噛み締める。きな粉と黒蜜の味が無くなってても飲み込まずにいる。でもそんなにしがみついても由也くんと一緒にいられる訳じゃない。

 先に飲み込んだのは由也くんだった。


「綾香さんの白玉は絶妙です」
「でっしょ~? 形はどうでも美味しかったね、ぷくく」


 由也くんをからかうけど笑いも怒りもしなかった。二人でズルズルと茶を啜る。これを飲み終えたら由也くんは帰る。もう会えなくなる。あ、営業先でばったり会うことはあるか。そうだそうだ、もう会えない訳じゃないって。

 飲み終えた由也くんは湯呑みを手に見つめている。お揃いの湯呑み、これは益子の陶器市で買ったんだっけ。箸はショッピングモールに入ってた箸専門店の、壁に掛かるマフラーは吉祥寺の雑貨屋。いろんなところに行ったなあ。走馬灯のように蘇る。


< 51 / 600 >

この作品をシェア

pagetop