年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
電車を乗り継ぎ、由也くんちの最寄り駅まで行く。初めて降りた駅、そこからはタクシーに乗った。初めて見る住宅街、由也くんは無言で前を見つめている。
タクシーが停まったのは、立派な門構えの和風家屋だった。
「由也くんちって老舗旅館だった?」
冗談でもなく出た言葉に由也くんはようやくニコリと笑った。二人でキャリーケースをガラガラ引きながら中に入る。見上げれば立派な鬼瓦、見渡せば立派な庭園、シシオドシの甲高い音も聞こえた。
「やっぱり旅館でしょ」
「綾香さん、行きますよ」
由也くんは大きく息を吐き、ガラガラと玄関の引き出しを開けた……。