年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
「でも由也くん……また殴られたりしない?」
「これ以上僕を殴れば社用に響きます。だから多分大丈夫」
「うん……」
「綾香さん」
「なあに」
「父を許してください……」
「へ?」
由也くんは突然頭を下げた。
「ちょ、いいよ、頭を上げて」
「商品情報が漏れた一件で、当時の父は精神的に参っていたと以前に専務から聞きまして……」
由也くん父親のことを話しはじめた。当時、スマ乳も首都圏近郊で大手と言われ、売上高もうなぎ登り、比例して従業員の数も増えていった。勿論設備投資も増やし、最大手に王手をかけていた。その頃だった、かつて無い健康ブームに乗り乳酸菌の研究に大金を注ぎ込んだ。ところが商品化にこぎつけたところでリークされる。ライバル社に先を越されスマ乳の売上は落ちた。そして融資の返済に支障が出始める。ワンマン経営で裏切る者などいなかった矢先での漏洩、由也くんの父親は精神的に追い込まれた。倒産か吸収合併か……そんな言葉が頭を過ぎった。毎日が地獄のようだった。商品化に関係する取引先に頭を下げて詫びて回り、金融機関に頭を下げて融資を願い回る。