年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)

「そのころ僕は望遠鏡を……」


 そんなときだった。星に興味を持ち始めた由也くんは誕生日のプレゼントに望遠鏡をねだった。父親は金策に走り回る中で高級な物は買ってやれず、たまたま入った文房具店にあった小さな望遠鏡を買った。僅か1万円、玩具のような代物……。でも由也くんは大喜びだった。寝ても覚めても望遠鏡を持ち歩き、大はしゃぎだった。
 しかし一方で父親は過度のストレスから不眠、胃痛、嘔吐にも悩まされ続けた。逃げ出してしまいたい……。しかし父親は投げ出したりしなかった。深夜に帰宅して部屋をのぞけば安い望遠鏡を抱えて眠る我が子、必ずや再び夜明けを見ると心に誓った。


「入社してすぐの頃に専務からこの話を聞かされて……。それまで僕は兄のおまけとしか思ってなかった。それからは特に父を裏切れないと思うようになりました」


 ずっとコンプレックスを抱えていた由也くんは父親の期待に応えたかったんだろう。

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