年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)

「腕時計?」
「うん」


 “結婚”するときに買ったお揃いの腕時計。ドアに挟まれたベルトは壊れて、一度修理に出した。


「僕の身代わりに壊れたでしょ。何と無く、赤ちゃんと重ねてしまって……あの頃は見る度に思い出して……苦しかった」
「苦しい……?」
「悔しい気持ちと悲しい気持ちと申し訳ない気持ちになって……」


 由也くんはしみじみ言った。あのとき私は自分で中絶を決めて鎌谷にサインしてもらった。由也くんは知らなかった。きっと由也くんも辛かっただろう、彼女が自分以外の人間しかも男性に相談して決断したんだから。

< 592 / 600 >

この作品をシェア

pagetop