年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
 でも今夜は違う。由也くんは鼻を啜り、泣くのを堪えて震えている。


「初めて会ったときのこと覚えてますか?」
「うん。この子、持たないな~って思ったしスマイル乳業って酷い会社だって思った」
「あの日、営業に出て3日目でした。契約なんて全然取れなくて、もう辞めたいと思ってました」


 でも私のアドバイスで1週間通い続けた。店長や品出しのパートの主婦と会話をするようになる。祖父譲り人当たりの柔らかい由也くんはすぐに溶け込み、ジンジャー豆乳を1ヶ月置いてもらえるようになった。その後もずっと贔屓にしてもらっている。由也くんが求めていた、暖かい付き合い、商売。


「なにも小さな会社でなくても、祖父のような商売は出来るんだと思って。あれから僕はどこの取引先に行っても暖かい付き合いをモットーにやってきた。あの時綾香さんに出会っていなかったら……」


 そう言って由也くんは言葉を詰まらせた。
< 66 / 600 >

この作品をシェア

pagetop