年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)

 のろのろ歩いていても駐車場にはすぐ着いてしまう。助手席に乗り込む。そして由也くんは駐車場を出ると私の自宅とは違う方向に走り出した。


「何処行くの?」
「分からないですか?」


 まさかこのまま逃げてしまうつもりだろうか、羽田空港とか成田空港とか高飛びする気だろうか。


「パ、パスポート持ってないし」


 私がそう答えると由也くんはケタケタ笑った。


「綾香さん、違います」


 それもそうだ。逃げるなら昨日用意してさっさと日本脱出すればいい。昨日は水族館、陶芸屋さん、蔵の街、と回り、今日は吉祥寺を歩いた。


「ん……?」


 最近訪れた場所から段々と昔に訪れた場所と順を追って出向いている。半年前に来た水族館、1年前に来た陶器の町、2年前に見たイルミネーション、3年前に泊まったホテル、付き合い始めてすぐの頃に来た吉祥寺……。なら。


「もしかして」
「うん。あの橋」


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