年下彼氏はライバル会社の副社長!(原題 来ない夜明けを待ちわびて)
ふんわり握っていた手が離れた。重ねていた手の平に空気が触れ、急に寒くなる。
「ここでキスしたら忘れてください」
「……」
由也くんは私を見てそう言った。そんなこと言われたって忘れられる筈はないし、忘れたくもない。由也くんと過ごした3年間を無にするなんて出来ない。憤りにも近い感情が沸き起こる。でも私が忘れられないって言ったら由也くんが気を揉む。
「うん、忘れる」
横に立っていた由也くんが私に向き直る。顔が近付く。冷たい唇が重なる。あのときと同じ、冷えてカサカサした唇だった。