彩られたクチビル
いつもよりオシャレをする。普段は着ないシフォンのピンクのワンピース。髪は上げてアップにした。



メイクにも気合を入れる。特に唇。彼との情事の中でキスを交わしたことはない。




彼がキスだけはしないでおこうと最初に言ったから。きっと彼の唇は本命(奥さん)だけのもの。



そんなに本命が大切なら私との秘め事をやめてしまえばいいのに。




鏡の前、唇を彩る。触れてもらえることのないこの唇の色は剥がれることがない。帰りもきっと綺麗に彩られたまま。




なぜなら私は今日、彼に抱かれるつもりはない。




会って『さよなら』を伝えるだけ。
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