彩られたクチビル
「待たせたな。濡れなかったか?」



「ええ、大丈夫。それより今日は話があるの。・・・終わりにしましょう」




少しだけ濡れた身体を車の中の暖房が温めてくれる。


彼の視線を感じたけれどそれに合わせることなく俯いて要件を伝えた。



「・・・そうか」



彼の声が車の中で響く。止めてくれるなんて期待はしてなかった。



でも、ただそれを受け入れられるくらい彼の気持ちは私になかったのかと思うと胸が切り刻まれるかのように痛む。



「今までありがとう。元気でね」




別れの言葉を口にしてドアに手を掛けたつもりだった。それなのにドアが開かない。
< 6 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop