ひだまりに恋して。
それからというもの、先生はいつでも金曜日の放課後は部室に来てくれた。

他に誰も部室なんて使っていないから、見付かることはなくて。

別に、誰に見つかってもやましいことなんてないんだけど。



「朝倉。」


「はい?」


「俺ばっかり撮ってて楽しい?」


「はい!」


「そう。」



それ以上何かを言うこともなく、先生は気怠そうに椅子の背にもたれる。



「だって、先生が来てくれるのは、金曜日の放課後だけですから。」


「まあね。」


「だから、金曜日の放課後は、先生だけを撮るって決めてるんです。」


「でもさ、いつも部室だし。なんか変わった写真撮れたの?」


「もちろんです。」



同じアングルなのに、毎週違って見える先生の横顔。

それは、夕陽の明るさとか、夕焼けが見えるかどうかとか、そういうことではない。

先生の顔が、変わってる。

日に日に切なく、どうしようもなく切なくなっていく―――



「先生、」


「ん?」


「私、先生のこと、守ります。」


「……は?」



思わず口をついで出た言葉に、先生は間抜けた顔をした。



「朝倉、お前の言っていることの意味が分からない。」


「分からなくて、いいですけど。」



先生は、私に守られる筋合いなんてないもんね。

だけど、守りたいんだ。

どうしてそんなに切ない顔をするのか。

それが知りたいんだ。

そして、先生を慰めてあげたくて―――



「朝倉のカメラ、誰の?」


「これ、ですか?」



古いカメラを、ぎゅっと胸に抱く。

私の思い出と、悲しみが詰まったこのカメラ。

ある人の目線で、この世界を切り取っていたカメラ。



「まだ、言いません。」


「は?」


「打ち明けなきゃいけないの、まだ先でいいですよね。」



そう言うと、先生は静かに頷いた。

それ以上、訊こうとはしなかった。

それが私にとって、心地よかった。
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