ひだまりに恋して。
ある日、教室で本を読んでいると。

きゃー、という女子の声に、私はのそっと顔を上げた。



「見て!横内先生だよ!」


「わあ、ほんとだ!2年の廊下を通るなんて、珍しいね。」



廊下を颯爽と歩く横内先生に、みんなが注目している。

私も、例外ではない。

だって、毎週会っているけれど、こうして明るい日差しの中で見る先生は、また違って見える。

いますぐ、カメラを構えたいくらいだ。



「朝倉いる?」



ぼけっと先生を見つめていた私は、急に目が合って驚く。

ばっと立ち上がると、椅子が倒れて大きな音がした。


先生は、私の机のところまで来ると、椅子を起こして。

そして、私を肘で小突いた。



「ドジ。」



意地悪に微笑む先生から、目が離せなくなる。



「今日の放課後、部室来られる?」


「だって今日、月曜日ですよ。」


「いいの。カメラは要らないから。」


「……はい。」



頷くと、先生はにっこりと笑った。

金曜日に見せる切ない表情とは違う、表の先生の顔。



「授業中寝るなよ。」


「寝てないです。」



ふっと笑うと、先生は教室を出て行った。

その背中を思わず見つめてしまう。


そして、周りの女子生徒は、先生が残していった笑顔に、ため息をついている。



「いいなー、朝倉さん。写真部なんでしょ?」


「ほんと、いいよねー!」


「私も写真部入ろっかな!」



何故か羨望の眼差しを向けられる私。

そして、花ちゃんも私を振り返って、嬉しそうにピースサインを見せた。


横内先生とこんなふうに話すことって、案外特別なことだったりする?

私は、首を傾げながら再び読書に没頭して行った。
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