ひだまりに恋して。
放課後、私は真っ直ぐ部室に向かった。

最近では、呼びに行かなくても、先生が先に部室に来ていることが分かっている。


軋む扉をガラッと開けると、いつものようにスーツ姿の先生がいた。

グレーのスーツは春の色。

色白の先生の笑顔を、より美しく見せる色だ。



「こんにちは。」


「よく来たね。」



写真を撮るわけじゃないのに、私を呼んだのは何故だろう。



「ここ、座って。」



部室にある古いソファーを指差す先生。



「ほこりが……、」


「ふっ。」



ほこりを気にする私に、盛大に吹き出す先生。

そんなに面白いこと言ったかな?

私は先生を呆然と見つめてしまう。



「気付いてたなら掃除しろ!」


「あっ。……帰ります。」


「おい、朝倉っ!」



そういうことだったんだ。

私に掃除をさせるつもりで、先生は呼んだんだ。


心の片隅にあった小さな期待が、一瞬にして崩れる。

当たり前なのに。

先生が、用事もないのに私を呼ぶわけないのに。



「ごめん、朝倉。笑って悪かった。……一緒に掃除しよう。な?」



なだめるように言われて、私は振り返る。

優しい先生の口元が、私をいとも簡単に頷かせてしまう。

先生は、ずるい―――
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