ひだまりに恋して。
第2章 先生の秘密

写真部と上原先輩

「来月のコンクール、何の写真出すの?」


「あ、全然考えてませんでした。」


「あと一か月だから、そろそろ考えないとまずいんじゃない?」



先生に、そう言われた金曜日。

私は、色々考えてみた。

風景なら、どこがいいかとか。

モチーフは、何がいいかも考えた。

だけど、やっぱり。

浮かばなかった。


一番最初に撮った、先生の横顔よりも、いい写真なんてあるはずなかった―――



「先生の写真にします。」


「え、」


「だめですか?」


「それは……。」



先生が、難しい顔をした意味なんて、分からなかった。

だけど、しばらくして先生は言った。



「……いいよ。被写体になるのを引き受けたのは俺だし。朝倉がそうしたいなら、俺には止める権利はない。」


「先生?」



先生の顔ににじみ出る苦悩。

私は何か、まずいことを言っているだろうか?



「何か理由があるなら、諦めて他の写真にしますけど……。」


「ああ。……いや、いいんだ。気にしなくていい。」



どこか歯切れの悪い先生の様子に、私は首を傾げるばかりだ。



「あ、ところで朝倉って、家で学校の話とかするの?」


「え?……んまあ、それなりに。」


「俺のことも話してる?」


「横内先生のことは、……なんか、秘密にしたくて、そう言えばあんまり話してません。」


「……そう。」



何か、今日の先生は変だ。



「どうかしたんですか?」


「何でもないよ。」



先生には、秘密が多すぎる。

先生の“何か”を感じる度に、私は一線を引かれたような気分になって。

だけど、いつかその何かを知ることになるのが、怖いような気もする。


一番最初に撮った、夕闇の中の悩ましげな先生のシルエットの写真を確認しながら、私はため息をついた。
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