ひだまりに恋して。
学園祭が近付いて、高校も活気づいている。

二回目の学園祭。

今年は、写真部としての活動もあるから、去年よりは主体的に参加していると思う。


写真部では、空き教室を借りて、ちょっとした展覧会をする。

三年生が中心になって企画を進めていて、私もいくつか写真を出すことになった。


でも、まさか先生の写真なんて出せない。

コンクールの方は、賞に入らなければ人目につくこともないので、大丈夫だと思うけれど。



「君、写真部?」



急に声をかけられて、振り返る。

そこには、銀縁メガネのよく似合う、クールな感じな男子生徒がいた。

名札の色で、先輩だと分かる。



「はい。この春から、入部しました。」


「そう。まだ部集会が開かれていないから、部員の顔知らないだろ?」


「はい。あの、先輩は?」


「上原(うえはら)。」


「上原、先輩。」


「君は?」


「あっ、私は、朝倉です。朝倉、萌です。」


「朝倉ね。覚えておくよ。」



その人は、クールに見える口元を、ほんの少し緩めた。

全く笑わないのかと思いきや、そうではないらしい。



「朝倉は、どんな写真出すの?」


「それが、まだ決めてなくて。……今度、撮りに行こうと思うんです。」


「そう。」


「上原先輩は?」


「僕は、出そうと決めている写真はいくつかある。でも、もう少し粘ってみようと思う。」


「何撮ってるんですか?」



そう問うと、上原先輩の目が、一瞬キラリと光った気がした。



「別に、何てことない街の風景だよ。それを、自分で現像してるんだ。モノクロだけど、だからこそどんな風景を撮っても、なんだか特別に見えるんだよ。」


「え、自分で現像!?すごいですね!」


「別に大したことはないよ。高校に暗室があるの知ってる?そこで作業してるんだ。」


「へええ!面白そう!」


「一度来てみる?」


「ええ、ぜひ!」



クールな見た目の割に、気さくな上原先輩。

この人と出会ったことを、私は幸運だったと思う。

例え、私のせいで。

先輩を、傷付けてしまうことになったとしても―――
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