ひだまりに恋して。
職員室の扉を思い切り開けると、先生たちが驚いたように私を見ていた。



「朝倉、どうしたの。」


「横内先生、いますか?」


「横内先生なら……あ、」


「何か用?」



すぐ後ろから声が聞こえて、ばっ、と振り返る。



「あ、横内先生!」


「……ああ、朝倉、だったかな。」


「そうです。入部届、出しに来ました。」


「ああ、そう。じゃあこっちに来て。」



先生に連れられて、職員室の片隅の先生の机のところまで行く。



「えーと、判子は押してある?」


「はい。」


「それと、約束だったと思うけど、被写体は決まったの?」


「はい!」


「一応その子も写真部ってことにするから、その人の名前を教えて。」


「横内豊先生。」


「うん。それは俺の名前だけど、そうじゃなくて、被写体、」


「だから、被写体は横内先生にします!」


「……は?」



先生は、きょとんとした顔で私を見つめた。

端正な顔立ちが、疑問符で覆い尽くされてる。

なんだか面白い。



「それさ、朝倉。被写体決まったことになってないから。入部は撤回な。」


「え?」


「いいか?決める、ってことはその人と話し合って了解を得る、ってことだ。俺はお前から頼まれた覚えも、了解した覚えもない。」


「だって、さっき思いついたんです。一週間ずっと悩んでて、決まらなくて、でもさっき、先生の顔が浮かんで。」


「顧問に頼ろうってか?それは、ちょっと甘いんじゃないか?」


「違います。先生が顧問だからじゃないです。ただ、先生を撮りたいって、そう思ったから。……お願いしますっっ!!!」



思い切り頭を下げると、先生の盛大なため息が聞こえた。



「そんなこと言われても、俺はそんなにヒマじゃない。」


「でも、先生しかいないんです。こんなに撮りたいって思ったの、先生が初めてなんです。」



そう。

初めて会った日に、写真部の部室で見た先生の横顔が。

いつまでたっても心に焼き付いて離れないんだ。

心に描いたその景色を、そのまま現像してしまいたいくらい。



「……金曜の放課後だけだぞ。」


「やった!!」



先生の横顔、勝ち取ったり。



「ったく、仕事を増やしてくれるな。」



先生は、もう一度大きなため息をついた。
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