だんご虫ヒーロー。【番外編集】
「…はぁ……」
ウエディングドレスを選ぶだけでこんなに疲れるとは思わなかった。
私は椅子に座って机に伏せた。
「…李ちゃんお疲れ様」
雪菜ちゃんが苦笑いでやって来て、私の向かいにある椅子に座った。
そして雪菜ちゃんは申し訳なさそうにして持ってきたカタログを開く。
「またドレスの話で申し訳ないんだけど、披露宴のドレスはどんなのにする?」
…出た、またドレス。
披露宴って結婚式の後にやるのだよね?
雪菜ちゃんは披露宴のドレスカタログを捲りながら色々と提案してくれた。
「結婚式のドレスは白いから、披露宴は少し派手に色をつけてもいいと思うんだ!」
私の気分を頑張って盛り上げようとしてくれてる。
こんなに雪菜ちゃん達が協力してくれてるんだから、頑張ろう。
私はめくられていくカタログを見ていた。
「雪菜、披露宴のドレスはこっちが用意するから大丈夫だよ」
「…夕里……?」
自分の試着を終えた夕里が私の隣に座った。
披露宴のドレスはこっちが用意するって、私聞いてないけど……
夕里を見ると、夕里はふっと笑って説明してくれた。
「披露宴のドレスは杏華さんに頼んであるんだ。
今社員を総動員して作ってくれてるよ」
「お姉ちゃんが…?」
夕里は微笑んでコクリと頷いた。
いつの間にお姉ちゃんに頼んでたんだろう。
そして手を回すのが早いことに驚く。
驚いてる私を他所に、雪菜ちゃんと夕里は話を進めている。
「分かった。どんなドレスかは聞いてる?」
「あー、確か李の名前にちなんで李色…紫っぽいのにするって言ってたよ」
……李色…
これを聞いた瞬間に蘇るのは、昔に愛しかった人に言われた言葉。
もう忘れていたはずなのに、言葉一つで思い出してしまうなんて……
そのせいで、固まっている私をジッと夕里が見ているなんて気付かなかった。