だんご虫ヒーロー。【番外編集】
ゆっくりと目を開けると真っ先に天井が目に映った。
でもその天井は歪んでいて、目に涙が溜まっていることに気付いた。
私、泣いてたの……?
夢を見て泣くなんて久しぶりだ。
しかもよりによって彼方の夢を見るなんて。
李色のウエディングドレスのせいだ。
隣を見ると夕里はぐっすりと眠っていた。
私は夕里を起こさないようにカーディガンを羽織りベッドから出て、テラスに向かった。
夜だけあって外は少し寒い。
そして夢に出てきた出来事を思い返す。
中学の時、たまたま彼方が見ていた雑誌に結婚式のことが載っていた。
それで話はウエディングドレスのことになって、彼方と李色のウエディングドレスを着ると約束した。
その話をしてから何度想像しただろう。
李色のウエディングドレスを着て、彼方が待つ祭壇までバージンロードをゆっくりと歩く。
彼方のところに辿り着くと、彼方は優しく微笑んでくれるの。
それで誓いのキスの前に彼方が「幸せになろうね?」って囁く。
こんな妄想を毎日のようにして、彼方との結婚式を待ち望んでいた。
そんな結婚式を挙げることができる。
でも一番見せたかった彼方はいない。
そう思うだけで涙が溢れてくる。
彼方のことなんて思い出すことなかったのに、ふと思い出すだけでこの涙もろさ。
おばさんになっても全然変わらないよ、私。