赤糸~新撰組の飼いがらす~
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丑の刻(午前2時~2時半)。
「なんだと?」
土方は、目の前で膝をつく監察の山崎丞に問い返した。
山崎はその姿勢のまま、淡々と繰り返す。
「二条城の近辺で、からすが副長を待っています。現在、沖田組長が既にあちらへ向かっています」
彼の話している内容は、なんとも呆気ないものだった。
今まで、何度も何度も捜査し続け、結局何も手掛かりは見つからなかった。
そのせいもあり、隊士たちはだらけはじめている。
なのに――…待っている、だと?
とても信じがたい話だ。
敵が自分を待ちかまえているなんて。
そして何より、舐められているようで、胸がざわざわした。
眉間に生まれる皺を押さえられない。