しわくちゃになったら、会いに行きます。


 あたしは俯いたまま、怒ったことに謝罪を述べる。


 でも、お兄ちゃんは「いや」と呟いて、否定した。




 「俺たちが悪かった。眞穂も、反省してる」




 そして、ポツリと言葉を落とした。


 あたしが顔を上げると、お兄ちゃんの瞳は、どこか遠いところを見ていて。


 何かを思い出している時、お兄ちゃんはこんな表情をする。


 尋ねようとして、あたしは口を噤んだ。


 思わぬ一言が、お兄ちゃんの口から零れたから。




 「彰太と、会ったんだろ? 今日も」


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