涙空
「遅かったじゃん。何かあった?」


帰って来て早々、伊織に言われた。


言えない。


望美を見て、嫌な事を思い出したなんて。


言えるわけない。



言ったら、伊織が同情で一緒に居てくれるようになる気がするから。


「何にも無いよ。ホラッ‼︎コーヒーミルク」


「んーありがと」


2人でジュースを飲みながら、どうでもいい話をする。


そんなとき、だ。


「あんたってC組に妹いんのね。」



「え…うん。」



伊織に望美の話題をしたことはない。それ以前に家族の話題だって。


「あんま似てないから小林に聞くまで知らなかったー。雰囲気自体違うしね。」



「そう・・・かな ?」



望美と雰囲気が似てないと言われて、嬉しい私は酷いだろうか。


伊織はそんな私に気づいたのか気付いていないのか、話を続けた。



「似てないわよー。短く言えば、あんたは人と接する時とか計算しなさそうだけど、御堂さんは計算ずくで人と接してそう。」



伊織の望美への印象は的確で、私は言葉を無くした。



「あ、今日勉強する時、数学のノート借りていい?」


「なあに?また忘れたの?もう何回目よ。いいよ貸したげる。でも私が使わない時よ?」


「ありがとう!」











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