思色(おもいいろ)
ときやへ戻ると、おときさんが昼ごはんどきの1番の忙しさを、1人でドタバタと切り盛りしていた。
お客さんが数人、お茶を入れたり、料理を配ったりしてお手伝いしている。

「おときさん、すみません今戻りましたあっ」と、李亜と大急ぎで戻ると
「遅い!」とお客さんたちがびっくりするような声でひと声叱って
それからはテキパキと
私たちを動かした。
「李亜はそこにあるお客さんが帰ったところの皿を下げる!若葉は今来たお客さんにお茶だしな!」

「はいっ」
2人とも返事を揃えて、普通に立っている暇もない位、通しで働きまくった。

私たちは、とんでもなく忙しいお店に
お邪魔してたのかもしれない。
小さなお店なのに、お客さんが出てはまた来る、出てはまた来るの繰り返しで
3時を過ぎてようやく人がいなくなった頃には
私も李亜も、もうヘトヘトだった。

「今日は、神社で催しがあったでしょう。あれで、こっちの方向に帰る人が流れ込んでたのね」
そう言って、リバーユを三杯もお代わりした陽香さんが疲れて座り込んだ私たちを見てねぎらってくれた。

「おときさん、若葉ちゃんがもう少しこのお店に残るって言ってたわよー」
「あらそうなのかい?じゃあ、毎日みっちり仕込んであげなきゃね!」
おときさんは、あたしたちの分のまかないご飯を持ってきて、意気込んでそう言った。
おときさんと陽香さんは、昔からの知り合いで
陽香さんは今30歳になるそうなんだけど(実際は全然そう見えないけど)子供の頃からお父さんの探索を手伝っていた頃、お父さんもここのリバーユが好きで、探索がてらよく一緒に立ち寄ったらしい。
「おときさんのリバーユより美味しいのを出す店は見たことがないわ。だから、探索方で遠出をしなきゃいけない時は必ずここへ寄ってから国の外へ出るし、戻って来た時もここへ寄って、リバーユを食べてから帰るの。
おときさんとのつきあいも、もう20年くらいになるわよね。」
かつ
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