思色(おもいいろ)
私は一応、17歳で時が止まってるので、彼女は4つ年上の21歳。
名前は、李亜(りあ)と言った。
手先が器用で、お母さんが元気な時は、布小物などを作って市場に売りに出ていたんだそうだ。
「あなたは?こんなところで、何をしていたの?」
李亜が今度は私に尋ねる。
私はどこまで話したらいいのか迷って、探している人がいること、まだ街に来たばかりで、右も左も分からないけれど、落ち着く先を決めたいと思っていることを話した。
「若葉も、大変なのね。
お家に帰れたらいいのに」
「うん…でも、とても遠いの。」
「そっかぁ…」
「ねぇ。一緒に探さない?私も今日は、寝るところもまだ決めていないし、奉公する先も頼るあてもないし」
李亜は、私にいたずらっぽく微笑んだ。
「うん、そうしよっか。今日はとりあえず、寝るところ探しだね!」
お茶屋さんにお礼を言いに立ち上がると
先ほど軒先を借りる際に迎えてくれた、おっきな女将さんが後ろに立っていた。
「女将さん、店先の大切な場所を貸してくださって、ありがとうございました。」わたしは、女将さんに頭を下げる。
「いや、いいんだよ。それよりお前さんたち、今日泊まるあてがないのかい?」
私たちは顔を見合わせて頷いた。
聞かれちゃってた。
女将さんは、一つ大きなため息をついて
「落ち着き先が見つかるまで、あたしんとこで住んだらいいよ。うちはお茶屋の二階なんだ。たまにばあちゃんの相手してくれたら助かるしさ。いる間は店も手伝ってくれたら、忙しい時助かるしさ。」と、一気にまくし立てた。
「ホントですか!?いいんですか?」
「2人とも、一緒にここにいていいんですか?」
私たちは手を取り合って喜んで
そのまま女将さんのおっきなお腹に抱きついた。
「ちょっと!やめておくれよ!」
女将さんは照れて、私たちを引きはがしてお茶屋さんに入ってしまった。
やった!
なんてついてるんだろう。
初めてのこの世界での友達と
私を雇ってくれる人が
同時に現れるなんて。
これは幸先いいなぁ。
もしかしたら、神楽もすぐ見つかるのかも。
賑わっていて、平和そうな街だし
早く、あっちの世界での未練も忘れよう。
私が新しい世界で暮らすように
悠も、新しい大学生活で
きっとたくさんのいい人に恵まれるはず。
それを思い出したら、少し鼻の奥がツンとして
涙が出そうになったけど
今は、とりあえずこの幸運に感謝して
李亜にこの世界のことを、色々教わろう。