思色(おもいいろ)
その夜、おかみさん(ときさん、という名前だと聞いた)に作ってもらった
うどんみたいな麺にとろっとしたあんがのったごはんをご馳走になり(これは、リバーユって言うんだって。李亜が教えてくれた。ここのお茶屋さんの名物料理なんだそうな。)二階で李亜と、布団を並べてゴロゴロし始めた。

「歩き疲れて、くたびれたでしょう」
私は李亜を労った。
「ううん。途中、色んなものを見てきたから、あまり退屈しなかったよ。」
「そっかぁ…」

私たちがいるこの場所は、岐莎(きしゃ)という国で
大きさはよくわからないけど、李亜は隣の国から歩いてきたから、この国の中心地の市場に出てくるまでは、1日半、かかったそうだ。

あっちの世界でいったら、県をまたぐくらいの距離なのかな。
よくわからない。

「賑やかな街って、活気があって、元気がもらえるじゃない。だから、出来たらこの市場の中とかで、働く先が見つかればいいなと思ってるの。
明日あたり、探索方の人が通ったらいいんだけど」

「探索方??」わたしが首を傾げると
「若葉、もしかして探索方知らないの?
」と、李亜はびっくりしたように聞いてきた。

「こういう大きな街には、必ず探索方というは人がいるものよ。仕事の口利きや、人探しや、いろんな頼まれごとを引き受けてくれる人のことよ」
「そうなんだ…」
「若葉の街には、いなかったの?」
「あ、う、うん!小さな町だからさ、見たこともなかったよー」
「そうなの?そういう町もあるのね。とにかく、探索方の人を探して、いい仕事を探してもらおう!
若葉も、その探している人のこと、相談してみたら?何かわかるかもしれないわよ。」

「でも、全然有名な人とかでもないのに居場所とかわかるもんなのかなぁ」
「そんなの、聞いてみなくちゃわかんないわよ。聞くだけならタダじゃない」
「聞くだけならタダ…それもそうね。」

神楽のことも、少しだけ、探す希望が見えたところで安心したのか
なんだか眠くなってきた。

久しぶりに体を使って、心も一緒になって驚いたり話したり、いつもしないことをしたから疲れたのかも。

「李亜、なんかわたし、もう眠いかも」
「うん、私もそろそろ寝ようかな」
「おやすみ」私が言うと、李亜は部屋のろうそくの灯りを消してくれた。
「おやすみなさい。」


< 7 / 13 >

この作品をシェア

pagetop